顔面神経麻痺
顔面神経麻痺は目がうまく閉じない、眉が動かない、口が完全には閉じない、口に含んだ水がもれるなど、顔の筋肉が動きづらくなったり、うまく動かせなくなる病気です。
顔の筋肉のことなのに、耳鼻咽喉科で治療するの?と驚かれることもあります。しかし、実は顔の筋肉を動かすための神経は耳下腺や耳の骨、顔面にあり耳鼻咽喉科の領域のため耳鼻咽喉科の専門となります。耳鼻咽喉科や耳鼻科という名称が一般的に認知されていますが、2021年には(社)日本耳鼻咽喉科学会が日本耳鼻咽喉科 頭頸部外科学会に名称変更をしており、頸部より上のことは耳鼻咽喉科の専門領域と思っていただくとわかりやすいかもしれません。
原因
顔面神経麻痺は、顔面にある神経がウイルスによって炎症が起こったり、圧迫されたりすることが原因です。原因はさまざまありますが、顔面神経麻痺の多くはウイルスが原因で発症するベル麻痺やハント症候群が原因と言われています。ベル麻痺は何らかのウイルスに感染して発症し、回復には1年程度かかることもあります。ハント症候群は水ぼうそうの原因にもなる水痘帯状疱疹ウイルスへの感染が原因で顔面の筋肉が動かしづらくなるだけでなく、めまいや難聴も併発することがあります。ハント症候群の場合は、ベル麻痺よりも治療に時間がかかる傾向があり、麻痺の後遺症が残りやすいといわれています。
症状
顔面神経麻痺の症状は、
・眉が動かず下がったような状態になる
・口が動かしづらくしゃべりづらい
・口角が下がり、口が閉じられない、水分がもれる
などが見られます。
顔の筋肉が動かしづらくなることにより、上記の症状がみられますが、一部の症状だけがみられることもあります。どの部位が動かしづらいかは、原因となる影響が出ている神経を推測することにも役立ちます。
治療
顔面神経麻痺の治療は大きく分けて2種類あります。
1)内服薬、点滴の治療
麻痺が発症してから早期に治療開始できる場合には、ステロイドや抗ウイルス薬を服用あるいは点滴して治療していきます。重度の場合は入院を勧めます。麻痺が発症してから3日経過すると、後遺症が残りやすくなると考えられており、早期診断、早期治療が重要です。
2)手術治療
内服薬での治療で十分な効果が得られない場合、神経の損傷が大きく、手術治療が必要となります。手術治療が必要とみられる場合には当院では基幹病院への紹介を行います。
帯状疱疹ワクチンと顔面神経麻痺
顔面神経麻痺は治療開始が遅れると、後遺症が残ることの多い病気です。うまく顔の筋肉が動かせなくなることで、喋りにくくなったり、表情が伝わりづらくなりコミュニケーションにストレスを感じたり、会話が億劫になってしまうこともあります。
もちろん美容上でも大きな問題が残ることがあります。
顔面神経麻痺の原因の一つである、ハント症候群を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスは子どものころに水ぼうそうにかかったことがあれば、体の中に長期間潜んでおり、大人になってからも免疫が低下して体調を崩したときに帯状疱疹を起こすこともあります。そのため水ぼうそうになったことのある方ならば、顔面神経麻痺を起こす可能性があるとも言えます。
少しでもリスクを減らすためには、予防も大切です。帯状疱疹を予防する帯状疱疹ワクチン(シングリックス、ビケンの2種類)があります。お住いの自治体によって、助成が受けられる場合がありますので、助成についてはお住いの市のホームページをご覧ください。
顔面神経麻痺で注意したいこと
顔面神経麻痺は症状が出たときにはいかに早く診断を受け、治療を開始するかが完治のカギとなります。顔に違和感を感じることがある場合は早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。また予防接種については、ワクチンの入荷や準備も必要なため接種希望の場合は一度お問い合わせください。