耳下腺炎
耳下腺は唾液を分泌する働きを持つ器官の一つで、耳の前から顎にかけて位置しています。
耳下腺炎は何らかの原因でこの耳下腺が炎症を起こして腫れや痛みなどの症状がみられる病気です。
原因
耳下腺炎は大きく分けると2つのタイプがあります。ムンプスウイルスへの感染が原因で耳下腺が腫れる流行性耳下腺炎と数カ月~1年程度の間隔で繰り返し起きる反復性耳下腺炎の2つです。
流行性耳下腺炎はおたふく風邪とも呼ばれる病気で、3歳~6歳ごろの子どもでよく見られますが、生後1歳未満の赤ちゃんで見られることもあります。一度かかると、抗体ができるのでムンプスウイルスが原因で再発することはないとされています。そのため、耳下腺炎を繰り返す場合や過去に流行性耳下腺炎に罹ったことのある方であれば、反復性耳下腺炎を疑います。反復性耳下腺炎の場合は、原因が完全にわかっているわけではありませんが、口腔内から細菌が耳下腺に侵入することが原因と言われています。
症状
・頬から顎にかけての腫れ
・あご、あごの下の痛み
・口が開けにくくなる
といった症状が見られます。
さらに、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の場合は上記の症状に加えて、
・高熱が出る
ことが特徴です。
ただし、発熱症状が見られないこともあります。特に小さい子供の場合うまく症状を伝えられず、熱が出ない場合には外見から少し頬が腫れているように見えるだけで見過ごされてしまうこともあります。悪化した場合には髄膜炎や膵炎などの合併症を引き起こすこともありますので、普段の様子と少し違う、なんとなく違和感があるという場合には一度診察を受けるようにしましょう。流行性耳下腺炎(おたふく風邪)にかかると片側性の高度難聴になることがあります。回復困難です。(ムンプス難聴)
1歳になったら1回目のワクチン接種を、小学校入学前に2回目のワクチン接種を強くおすすめします。
治療
診察時には、口腔内の状態や外側から触って腫れや痛みの程度を確認します。年齢や過去に流行性耳下腺炎にかかったことがあるかなどを聞いて診断します。不明の場合は採血して、ウイルスの抗体価をはかり、診断します。
流行性耳下腺炎の場合は、痛みを抑える鎮痛剤や解熱剤を使用して症状を和らげるようにします。ムンプスウイルスというウイルスが原因のため、ウイルスが体外に排出されるまで体力を維持したり、脱水症状を起こさないように注意しましょう。また流行性耳下腺炎については、学校保健安全法で耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫れが現れてから5日間は出席停止とされていますので、お友達に移さないためにも安静にしてしっかり休むようにしましょう。
反復性耳下腺炎の場合、出席停止期間はありません。細菌が原因とみられる場合には、抗菌薬を服用して治療していきます。
監修者情報
こだま耳鼻科クリニック 院長 児玉 将隆
2000年2月に愛知県瀬戸市にこだま耳鼻科クリニックを開業。地域のニーズに的確に応える医療を目指し、耳鼻科医として20年以上診療を行っている。開業前には名古屋市立大学病院、豊田厚生病院(旧:加茂病院)にて勤務し、研鑽を積む。日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医、日本気管食道科学会認定専門医、日本旅行医学会認定医。